
アンティーク。フランス、リモージュ窯。
陶磁器に手描きの絵付け。縦3.5cm。
暦の上ではもう春。
そろそろお花のアクセサリーを着けてもよいでしょうか?
れんげ、たんぽぽ、しろつめ草、おおいぬのふぐり、すみれ、すずらん…。
私が幼い頃、我が家にほど近いM星(乗馬クラブ)のまわりは田んぼが広がっていました。
先輩(いまはK星で某女子大馬術部の監督をしています)は当時、
クラブから駅まで馬に乗って朝刊を買いに行ったものだとか。
のどかな時代でした。
私は田んぼでレンゲやしろつめ草を集めて、お花の冠やネックレスを作って遊びましたっけ。
田んぼ一面のレンゲ畑、懐かしいです。
父に見せてあげようと野の花のブーケを作って家にもって帰ったことがありました。
小さなガラス瓶に生けてダイニングテーブルに飾ってもらいました。
ところが父が帰宅するころには、野の花はぐったりと萎れていたのです。
自然の美しさは人間の手で手折ってはいけないのだと、子供心に学びました。
田んぼはどんどん住宅地に変わり、
最近は野の花をみかけることもなくなりました。
それでもある日、姪っ子と近所を歩いていましたら、
住宅地のアスファルトのすき間から、紫色のスミレたちが顔をのぞかせているのを見つけました。
可憐にそして逞しく咲くスミレたち。
「これはスミレよ。とても綺麗だから摘まずにそのままにしてあげましょう。」
姪っ子もこっくり頷きました。

私のこのスミレのブローチは、
美しい野の花の姿を永遠に閉じ込めて、ずっと私のそばに残しておける。
そんな、野の花への私のせつない恋心をかなえてくれます。
「ねぇ、あのときのスミレ、覚えてる?」
「あの春の日の、田んぼのあぜ道に咲いていた野の花、
よく作ったお花の冠、覚えてる?」
私のそんなメッセージ。見る人に伝わるといいな。